凍結中のサイト「雪見酒girl's talk(http://loveasgard.yukimizake.net/)」の続編など。
聖闘士星矢アスガルド編、黄金、女の子中心。捏造多め。ノマカプ推し。
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「この樹を、切り倒せばいいのだな?」
名工に研ぎ澄まされた刃よりも鋭いまなざしの男が、巨大な枝を広げる大樹を見上げた。
砂漠の風に、黒く短い髪をなびかせながら。
迷いのない短い物言いに、この男の並々ならぬ覚悟が秘められている。
デスマスクは、せせら笑った。と、折からの風にのってきた黄砂が口に入ったらしく、軽くむせた。
「げほっ。ま、そんな、しゃっちょこばんな。サガの合図を待て。むやみやたらに切り刻んだら、アイオロスが無駄死にするぞ」
風下を向き、砂を吐き出しながら忠告するデスマスクを、シュラはちらりとだけふり返った。物言わぬ背中が『無論』と応えている。
積尸気を開く能力を持つデスマスクは、サガを黄泉比良坂まで送り届けた際に勅命を受けた。
『アイオロスを根から切り離す瞬間に合図を送るから、同じタイミングでシュラに木を倒すよう伝えろ』と。
現世と黄泉のふたつの世界に同時に存在する世界樹は、ふたつの世界で同時に破壊しないと生命活動を停止できないのだと。
「全く、あの旦那って昔っから無茶苦茶だよな。殺すにしても助けるにしても」
「五月蠅い。無駄口を叩くな」
「お前は黙って気合いを入れるタイプだろうが。オレは喋りながら集中力を高めるタイプなんだよ」
「……なら、好きにしろ」
シュラは、樹だけを見上げて吐き捨てた。
この手に、両腕に、アイオロスのしなやかな筋肉を切り刻んだ感覚が今もありありと残っている。
あの頃は少年だったが、正義がどちらにあるかわかっていた。力がどちらにあるのかも。わかっていて、手を振り下ろしたのだ。サガを、力を、シュラの信じる『現実』を選んだがゆえに。
――なんて感慨は、デスマスクの『集中法』とやらに片っ端からぶっつぶされた。
「別にさ、シャカに冥界に行かせて、アイオリアに樹を破壊させてもいいわけよ? なのにオレとシュラって人選がまず恩着せがましいよな」
「オレは反省なんかしてねぇし、これからもしねぇってのに。今すぐ13年前に戻ったって、サガの側につくっつーの」
「だってよ、シオン爺が教皇だった頃、聖域の暮らしってメチャメチャ悲惨だったじゃん。聖戦しか見据えてねぇ前時代の遺物よっか、ここの暮らしを少しでも良くしようって奔走したサガのがまっとうだよ。人間としてな」
「才能がないと見捨てられた聖闘士崩れどもに、兵卒をはじめとする職を与えたから、規律がよくなった。一番でっかいのは、聖域在住の人間に結婚を認めたこったな。健康な男子に禁欲させるなんて、根っからまちがってんだよ。お陰で女聖闘士の候補生どもが、レイプされなくなってきたしよ。世俗に通じた潔癖性がトップに君臨したお陰だよな」
「食料だって。昔は狩りに成功したヤツだけが食いもんにありつけただろ。それを配給制にして聖闘士くずれに配膳させたから、少なくとも飢え死にする輩はいなくなったじゃんか。病気も減った。思いだしてみろよ。水脈はちゃんとあんのに、清潔な井戸もろくになかったんだぜ?」
「いいことずくめじゃん。どこが悪の教皇だよ。オレにいわせりゃ、サガが進言してきた改革なんて歯牙にもかけなかったシオン爺の方が、よっぽど人でなしだ。根性論だけでも聖闘士は育つけど、死んじまったヤツらもそれはそれでいーけど。脱落したまま生き永らえている人間はどうなる? あいつは漆黒の心と戦いながら、自分より弱いものの為に、こんなにも心血そそいできたじゃないか」
「結果的には、一旦アテナを外の世界に出して正解だったんじゃね? いっぱしの企業人に育てられてよ。何万人もの生活支えてっからな。サガが私欲だけで聖域をまとめてたわけじゃねえって、認めるだけの器ができたってもんよ。そこら辺、聖域育ちの女神さまじゃ、わっかんねぇまんまだっただろ」
――とまぁ、これだけごたくを並べられたら、シュラの集中力も削がれる。
つくづく『イイ性格だよな』と、思う。生真面目なシュラには、トリックスターを思わせるいい加減さと頭のキレが、羨ましくも鬱陶しくも思える。
ようは「肩の力を抜け」と言っているのだろうが、ハッパのかけかたが上司同様に無茶苦茶だ。
そんなふたりの黄金聖闘士たちを横目で見ながら、砂漠の民が水を汲んでは去っていった。
シュラとデスマスクの知るところではないが、民の間で「彼らは、神の使いか、悪魔の使者か」と、長く話題になったという。
名工に研ぎ澄まされた刃よりも鋭いまなざしの男が、巨大な枝を広げる大樹を見上げた。
砂漠の風に、黒く短い髪をなびかせながら。
迷いのない短い物言いに、この男の並々ならぬ覚悟が秘められている。
デスマスクは、せせら笑った。と、折からの風にのってきた黄砂が口に入ったらしく、軽くむせた。
「げほっ。ま、そんな、しゃっちょこばんな。サガの合図を待て。むやみやたらに切り刻んだら、アイオロスが無駄死にするぞ」
風下を向き、砂を吐き出しながら忠告するデスマスクを、シュラはちらりとだけふり返った。物言わぬ背中が『無論』と応えている。
積尸気を開く能力を持つデスマスクは、サガを黄泉比良坂まで送り届けた際に勅命を受けた。
『アイオロスを根から切り離す瞬間に合図を送るから、同じタイミングでシュラに木を倒すよう伝えろ』と。
現世と黄泉のふたつの世界に同時に存在する世界樹は、ふたつの世界で同時に破壊しないと生命活動を停止できないのだと。
「全く、あの旦那って昔っから無茶苦茶だよな。殺すにしても助けるにしても」
「五月蠅い。無駄口を叩くな」
「お前は黙って気合いを入れるタイプだろうが。オレは喋りながら集中力を高めるタイプなんだよ」
「……なら、好きにしろ」
シュラは、樹だけを見上げて吐き捨てた。
この手に、両腕に、アイオロスのしなやかな筋肉を切り刻んだ感覚が今もありありと残っている。
あの頃は少年だったが、正義がどちらにあるかわかっていた。力がどちらにあるのかも。わかっていて、手を振り下ろしたのだ。サガを、力を、シュラの信じる『現実』を選んだがゆえに。
――なんて感慨は、デスマスクの『集中法』とやらに片っ端からぶっつぶされた。
「別にさ、シャカに冥界に行かせて、アイオリアに樹を破壊させてもいいわけよ? なのにオレとシュラって人選がまず恩着せがましいよな」
「オレは反省なんかしてねぇし、これからもしねぇってのに。今すぐ13年前に戻ったって、サガの側につくっつーの」
「だってよ、シオン爺が教皇だった頃、聖域の暮らしってメチャメチャ悲惨だったじゃん。聖戦しか見据えてねぇ前時代の遺物よっか、ここの暮らしを少しでも良くしようって奔走したサガのがまっとうだよ。人間としてな」
「才能がないと見捨てられた聖闘士崩れどもに、兵卒をはじめとする職を与えたから、規律がよくなった。一番でっかいのは、聖域在住の人間に結婚を認めたこったな。健康な男子に禁欲させるなんて、根っからまちがってんだよ。お陰で女聖闘士の候補生どもが、レイプされなくなってきたしよ。世俗に通じた潔癖性がトップに君臨したお陰だよな」
「食料だって。昔は狩りに成功したヤツだけが食いもんにありつけただろ。それを配給制にして聖闘士くずれに配膳させたから、少なくとも飢え死にする輩はいなくなったじゃんか。病気も減った。思いだしてみろよ。水脈はちゃんとあんのに、清潔な井戸もろくになかったんだぜ?」
「いいことずくめじゃん。どこが悪の教皇だよ。オレにいわせりゃ、サガが進言してきた改革なんて歯牙にもかけなかったシオン爺の方が、よっぽど人でなしだ。根性論だけでも聖闘士は育つけど、死んじまったヤツらもそれはそれでいーけど。脱落したまま生き永らえている人間はどうなる? あいつは漆黒の心と戦いながら、自分より弱いものの為に、こんなにも心血そそいできたじゃないか」
「結果的には、一旦アテナを外の世界に出して正解だったんじゃね? いっぱしの企業人に育てられてよ。何万人もの生活支えてっからな。サガが私欲だけで聖域をまとめてたわけじゃねえって、認めるだけの器ができたってもんよ。そこら辺、聖域育ちの女神さまじゃ、わっかんねぇまんまだっただろ」
――とまぁ、これだけごたくを並べられたら、シュラの集中力も削がれる。
つくづく『イイ性格だよな』と、思う。生真面目なシュラには、トリックスターを思わせるいい加減さと頭のキレが、羨ましくも鬱陶しくも思える。
ようは「肩の力を抜け」と言っているのだろうが、ハッパのかけかたが上司同様に無茶苦茶だ。
そんなふたりの黄金聖闘士たちを横目で見ながら、砂漠の民が水を汲んでは去っていった。
シュラとデスマスクの知るところではないが、民の間で「彼らは、神の使いか、悪魔の使者か」と、長く話題になったという。
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