忍者ブログ
凍結中のサイト「雪見酒girl's talk(http://loveasgard.yukimizake.net/)」の続編など。 聖闘士星矢アスガルド編、黄金、女の子中心。捏造多め。ノマカプ推し。
Admin / Write / Res
<< 03   2025/04   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30     05 >>
[332]  [331]  [330]  [329]  [328]  [327]  [325]  [324
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




春に覚醒




 五老峰の大地にすみれが咲く頃、聖戦を戦い抜いた男が目を開いた。
 優しい幼なじみが、ホッとした笑みを浮かべている。彼女の髪は、こんなにも黒かっただろうか。ゆっくりと手を差し出すと、家事で荒れた小さな両手が包み込んできた。
「紫龍! 目を覚ましたのね!」
 黒目がちの大きな瞳に、大粒の涙が浮かんでいる。
「春麗……」
 何を伝えたらいいのだろう。言葉が見つからない。
 胸に倒れ込んできて「しりゅう、しりゅう」と泣き崩れる娘が、ただ愛しい。
 紫龍は彼女の髪を撫でながら、ふと隣の寝台を見た。
 堂々とした体躯の、若々しい老師が眠っている。
 紫龍が老け顔で老師が童顔だから、いっそ紫龍の方が年上に見えるこの状況、どう説明しよう? 
「春麗。隣にいる御方なのだが」
「ええ。老師ですってね」
「えっ」
 豆鉄砲をくらったような顔の紫龍に横目に、春麗は涙声でこたえた
「あなたたちを連れてきた人が、教えてくれたの」
「俺たちを連れてきた人――?」
「なんて言ったかしら。フランス人みたいな、斎場みたいな名前の人」
「フランス人? 斎場?」
 紫龍の脳裏を駆けめぐるは、水瓶座のカミュに、蜥蜴座のミスティ。それからなぜか辰巳。
 自分と老師をここにつれてくるという気遣いが、可能性としては辰巳が一番高い気がする。
 だが、疑問だ。辰巳なんて斎場あったかな。ていうか、辰巳とフランスつながらないし。
「思いだしたわ。シオンヌさん!」
「……シオンだ」
「あら、お知り合い?」
「そりゃもう。前の教皇だし」
「あら、前教皇ってお亡くなりになったんじゃなかったの?」
「いや、その」
 そこから説明スタートか。覚悟を決めた紫龍に、春麗は流星拳のようなスピードで世間話をはじめた。
「たしか、老師と同じ年だったのよね。今までお亡くなりにならなかったコト自体が不思議だわ。おサガさんて方に殺されたって聞いてたけど、ちょっと怪しいわよね。そこまで長生きしていたら、ちょっと肩を叩いたらぽっくりいっちゃったかもしれないでしょう? そこをおサガさんが責任を感じて教皇になりすましていたとか。ほら、おサガさんってうつ病を患ってアテナを殺そうとなさったのよね? うつ病になる方って責任感が強いみたいね。当時は沙織さんだって赤ちゃんだったものね。赤ちゃんのお世話と男の子9人の育児と、老人介護じゃ重労働だわ。心配だわ。おサガさん元気?」
「春麗……」
 だれだ、このガセネタを春麗に吹き込んだのは。
 体力的にしんどくて生返事すらできない。
 そんな生真面目な紫龍の横で、「ふぉふぉふぉ」と聞き慣れた口調の若い声が笑いかけてきた。
「おサガさんは元気じゃろうよ。今では、チビたちも大きくなったでな。みんな立派に成人して、おサガさんの片腕として働いておる」
 18歳の青年に若返ってしまった老師はそう言うと、長い体躯をくの字に丸めてヒーヒー笑った。
「老師!」
「まぁ、目を覚ましていらしたのね!」
「うむ。ちょっと声をかけるタイミングがわからんくての」
「とにかくまぁ、お家騒動は終わったのね? よかったわ。じゃあ、おサガさんはアイオロスさんとよりを戻したのね。聖域も安泰ねぇ」
 どんな安い設定の昼メロだ。
 つうか、おサガさんて誰だ。
 大家族の嫁かなんかか?
 のほほんと勘違いを貫く春麗に、訂正しない老師。
「ところで春麗。昏睡しておったわしらの世話を、一手に引き受けてくれていたのじゃな。大変じゃったろうに。ありがとう」
「そんな。当たり前のことをしただけです。でも、もう戦いはダメですよ?」
「ほっほっほ」
 目頭をそっとおさえる春麗に、紫龍は時の流れを見た。
 自分が聖衣を得て日本に発った時、春麗は13歳の少女だった。先端が紅色に染まったばかりの蕾のように可憐だった春麗。
 今は、スラリと背が伸びて、気持ち面長になったようだ。黒々とした髪は毛先が痛んでおり、それをひっつめているから余計に疲れて見える。
 だが、美しい。
 疲労の色が、年頃の娘らしい色香を醸しだすなんて。
 
「ところで老師。ずっとお風呂に入ってませんよね。お背中、流しますわ?」
「うむ」
 ムクッとおきあがる老師(18歳)と、手桶を準備する春麗。
「ちょっちょっ……」
 あわてて身を起こす紫龍。
「あら、紫龍もお風呂に入りたいの? 待っててね。老師が先よ」
「ほっほっほ。年功序列じゃ」

 いやいやいやいや、そうなんだけど、そうじゃなくて。
 
「老師も手足が伸びたのですから、ご自分でなされたら良いかと思うのですが」
 精いっぱいの老婆心は、こともあろうに春麗に一蹴された。
「やあねえ、紫龍、ヤキモチやいてるの? 今さら何をおっしゃるやら。ねぇ、老師」
「ほっ。紫龍も若いの」

 夕陽に向かって走り出しそうな若者に、んなこと言われても。

 引き止める術を失った紫龍は、ぽかーんとふたりを見送った。
 老師は老師だから精神的には老人というか仙人に近いんだろうが、ビジュアル的に納得できない。

 紫龍はもういちど目を閉じた。
 そして、そのまま気を失った。
 これは夢だ。老師が脱皮した夢。真に目を覚ましたときは、老師は間違いなく、老人なのだと……。


PR
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
八咲
HP:
性別:
女性
自己紹介:
マイナー嗜好の腐女子。
バーコード
ブログ内検索
アーカイブ
カウンター
アクセス解析
Copyright ©  黄金と海のあいだ All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]